2024年6月1日(土) 12:00
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カラーチェンジの世界をのぞいてみませんか

宝石の中には特定の条件下でカラーチェンジするものが存在します。

ただでさえ人々を虜にするジュエリーがさらに変化するため、
その価値は非常に高いものとなっています。

今回はカラーチェンジジュエリーの謎にできるだけ分かりやすく迫ってみようと思います。

↑6月の誕生石でもあるアレキサンドライト。カラーチェンジする宝石としても有名で希少石でもあります。

そのためにはまず、身近だけどよくわからない【光】を知る必要があります。

結論からいうと、私達が【光】と言っているものは電磁波の一種です。
そして、”目に見える光”つまり可視光線のみを一般的に【光】と呼んでいます。

電磁波という名前からもわかるように、電磁波は波なので波長によって種類が分かれているのですが

このグラフを見ていただけるように、私達が認識できる部分はほんの少しです。

電波は私達の暮らしの中でも大変多く使われており、グラフ左の波長が長いものでは電波時計などの受信電波(40khz⇒約7.5km)が、短いものではレントゲン写真(0.00001mm)など。私達の見えない電波が飛び交っています。

一方で私達が認識できるのは700nm(ナノメートル)~400nmまでの極々少しのみです。
この可視光線部分を拡大してみると

波長が長い順に赤→緑→青→紫といわゆる虹の並びになっています。

ここまでで、自然光が全ての色を含む光から成り立っていることが分かったところで、
私達がどのように色を認識しているかということに立ち寄ってみましょう。

一見すると人間は様々な色を認識しているように思えます。しかし、実際のところ間違いで赤・青・緑の3色の強弱のみを感じ取っている細胞が存在し、その強さの割合によって色を感じています。それがいわゆる光の三原色であり、パソコンなどでも使っているRGB表記になります。

  

光の三原色の表は、赤と緑が混ざれば黄に。赤・緑・青の3つが混ざれば白に見えるといったものですが
よくみて頂きたいのは補色の関係です。

右の表を見てください。赤とシアン、緑とマゼンダ、黄色と青が、補色の関係になっており、補色とは白からその色を除いたときの色を示しています。
私達がよく目にするRGBでいうと、白がR(255)G(255)B(255)になっており、これは3色すべてを感じているということになります。

例えば赤を示すR(255)G(0)B(0)の補色は引き算でR(0)G(255)B(255)になり、シアンになるわけです。

これは、私達が白と認識している光は実は1種類だけでなく、それぞれの色と補色のものを組み合わせたものであれば全て白と判断し、私達が赤色と認識しているものは、単純に赤色の光のみのものと、全ての色を含んでいるものの中でシアンの色のみが抜けているもののどちらも赤と認識してしまうということです。

これはモノの色を認識している上で非常に重要な事柄なのです。

実際のケースでいえば、物質として見ているバナナは、青色より波長が短い部分を吸収するために補色の黄色に見えるのですが
今この記事を見ている画面上のバナナはディスプレイ上で、緑と赤の光を足して黄色にみせています。

 

ここで本題に戻ってみましょう。
アレキサンドライトは、クリソベリルの変種で、クロムを含む宝石です。
クロムはルビーなど他の宝石にも含まれている物質ですが
アレキサンドライトでは、そのクロムが主役となりカラーチェンジに貢献します。

蜂蜜色(ハニーカラー)のクリソベリルに黄色を吸収するクロム。
その結果、アレキサンドライトは緑色系及び、赤紫系以外の部分が吸収されて、残った左右の緑色系と赤紫の部分がバランス良く残った宝石なのです。


そのため、光源の光の構成によって色が変わる摩訶不思議な現象が発生するのです。
①黄色のバンドよりも波長が長い光が多く含まれる光源では赤が多く、緑色の成分がもともと少ないので赤紫色に。②全ての波長が均等に含まれる太陽光では緑色にみえます。

①の赤系統の色が多く含まれる代表的な光源といえば、電球です。下記のグラフ左下を見ていただけるとわかるように、赤が多く、青に向かうほど少なくなっています。※波長が長いものが右になっています。

電球は、演色性が高く、料理が美味しく見えることから、艶っぽいレストランで採用されることが多いのですが、そこでアレキサンドライトを見ると変化を楽しめます。さらに言うならば、ロウソクの光は右側に部分つまり波長の短いものが電球より更に少なくなるので、より赤に見えます。
(ロウソクの光はアレキサンドライトの変色性の発見のエピソードでも出てきます。もしアレキサンドライトをお持ちで有れば是非試していただきたいです。)


ー光源による分光分布の違い(panasonic HPより引用)ー

現在急速に蛍光灯から移り変わっているLEDは青と黄色の山が合わさった形をしています。
電気の色合いは、右側(黄色)の部分の山を大きくしたり小さくすることによって調整しています。
これは、現在使われている一般的なLED照明が青色のLEDと黄色の蛍光体の組み合わせで調整しているからです。

そうすると、同じ電球色でも、電球そのものとLEDの電球色では構造上異なり、LED下では、アレキサンドライトの変色効果はどうしても少なくなってしまいます。
逆に、白色LEDでは、黄色の山が小さくなるため、全ての色が連続してバランスよく含まれる太陽光や蛍光灯と比較的同じように緑への変化を観察出来ます。

ー照明用白色LEDの一般的な分光分布図ー(東芝ライテック㈱HPより引用)

現在ではこの谷を補完すべく、赤色・緑色の蛍光体を使うことで高演色と謳うLED照明も出ていますが、シアン色がボコッと谷になってしまう状況は変わりなく、室内で自然光のような光というのはまだ難しいようです。

 

ー最後にー
アレキサンドライトの変色効果は魅力的なのですが、普段の生活においてそれを感じられる場面が徐々に少なくなってしまっています。

昔であれば、日中は緑。ロウソクや電球で過ごす夜では真っ赤にと普段から感じられたのでしょうが、
現在では少なくとも蛍光灯。蛍光灯も2027年には法律上製造終了が決まっており、さらなるLED化が進んでいくことになるでしょう。
一見、同じ電球色に見える蛍光灯・LEDでも実は、電球・ロウソクのような色光の構成とは全く違うため、それらでみても、思いの外赤色が出ず残念…ということもよくあります。

そして、今回は光源によって見え方が違う!ということで簡単に解説しましたが、同じアレキサンドライトでも赤みが強い子や緑みがつよい子など、一つ一つ異なる個性をもっています。それぞれの宝石の長所が一番よく出る光をさがしてみても面白いかもしれません。

 

 


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